山形県東村山郡山辺町大蕨というところに玉虫沼という沼があります。
この場所に昔からあるため池です。ため池ということは人工のものですので、昔の人が作ったのでしょう。
この玉虫沼ですが、メジャーな観光スポットということではありませんので、山形県外から観光客がくることはありません。
玉虫沼のすぐ近くには、山形ゴルフ倶楽部というゴルフ場があります。
山の上にある標高の高いゴルフ場です。このゴルフ場に行く途中にあるのが、この玉虫沼です。
駐車場もありますし、駐車場にはちゃんとトイレもあります。
人影がなく、少し寂しく、しかしながらその水面をみると、それは穏やかでそして美しささえ感じることができます。
そんな印象の玉虫沼。
不思議な力に吸い寄せられるようにこの沼に近づいてみました。
玉虫沼の玉虫とは人の名前です。
玉虫沼の伝説
玉虫沼には、玉虫姫物語という悲しい伝説があります。
お城に奉公していた玉虫という働き者の娘。働き者のためお殿様や奥方様にも気に入られていました。
特に、良い香りのするご飯を炊くということで評判でした。
良い香りとは、麝香(じゃこう)のことです。ジャコウジカから取れる香料で、いわゆるムスクの香りのことです。
何故、玉虫の炊くご飯からジャコウの香りがするのかというと、ご飯を炊く時に白蛇を入れていたからです。
白蛇からジャコウと似た香りがご飯についたわけです。
では何故、玉虫は白蛇を入れていたのでしょうか?それは玉虫の母親から教えてもらったからです。
ご飯がおいしくなるから、この白蛇を入れなさいと母親から白蛇をもらったのです。
言われたとおりにご飯を炊いたところ、いい香りがすると評判にになったのです。
この時点で白蛇を入れてご飯を炊く?この行為に違和感を覚えます。
が、しかし、
よく考えてみると、特に不思議なことはありません。
大昔のことですし、現在の食文化で大昔の日本の食文化を理解することはできません。
玉虫の母親の家庭では白蛇ご飯はあたりまえだったのかもしれません。
白蛇自体珍しかったでしょう。漢方的な効果があったのかもしれません。
話を戻します。
玉虫が蛇ご飯を炊いているということは城内で噂になっていました。
その噂を耳にした奥方はこっそり竈の蓋を開けました。
目にしたのはトグロを巻いた白蛇でした。
やはり噂は本当だったのか、と奥方は思ったことでしょう。
あんなに気に入ってくれていた奥方を失望させてしまったと、玉虫は城を出ました。そしてこの池に飛び込んだのです。
玉虫沼の水面はいつも綺麗に輝いていると言われています。
その理由は今も、働き者の玉虫が掃除をしているからだと…。
これが玉虫沼に伝わっている現在の伝説です。
現在の伝説以外にも昔の伝説もあります。昔の伝説はこれとは若干内容が異なります。
この伝説の中に出てくる玉虫姫の姫とは、お姫様のことを指しているのではありません。
女の子の総称のことです。玉虫はお姫様ではありませんでした。一般の人です。

白蛇の意味と矛盾
玉虫がなぜご飯を炊く時に白蛇を入れたのか?不思議に思うかもしれません。土地柄を考えると特に悩むことはないと思います。
山の中の集落という背景。昔は一軒一軒が離れていたわけです。
今でも蜂の子を食べている地域もありますし、イルカや鯨、熊、狸を食べる地域もあります。
白蛇もそのひとつにすぎません。母親が娘に教えたということは母親も自分の親から教えてもらった可能性もあります。
一軒一軒離れている地域であれば、その家庭でのみ普及した食べ方もあるはずです。
竈の中に白蛇が入っていることを発見した他の女中が大騒ぎをした、という記述があります。
しかし、普通に考えれば、そのようなことがあるはずはありません。
白蛇を入れてご飯を炊くことが、その集落の風習として存在していたのであれば、他の人達が大騒ぎをすることはないはずです。
自分たちも同じように白蛇を入れて炊いていたはずです。
このことから、白蛇をご飯に入れて炊くという調理方法は玉虫姫の家庭にしかなかった調理方法ではなかったのか?
という推理ができます。
そもそも日本には蛇を食べる習慣があります。今でも食べている地域は存在します。
その中で貴重な白蛇ともなれば…。お殿様への献上に値するほど貴重だったことは明確です。
お殿様なのですから、体に良いものを食べて貰いたいという玉虫と玉虫の母親の優しさなのではないでしょうか。
食は文化です。ただ食欲を満たすだけの行為が食事ではないのです。その土地の文化や環境が大きく影響しています。今もです。
玉虫と玉虫の母親のお殿様への優しさはまわりの人達から全く理解されなかったというとなのでしょう。なんとも悲しい伝説です。
バス釣りやワカサギ釣り
玉虫沼は釣りもできます。釣れる魚はブラックバス、ワカサギ、ヘラブナなどです。
しかし事故も起きているようですので、特に子供連れで釣りをする時は注意が必要です。
人工のため池ですので、水深があると思います。滑り落ちないようにしましょう。
玉虫沼農村公園「香りのひろば」
この沼のすぐ近くには、玉虫沼農村公園かおりの広場という観光スポットがあります。
いわゆる公園です。この公園で有名なのがラベンダーです。
2020年は日本全国の行楽地はコロナの影響を受けて大打撃でした。ここも同様です。閉鎖されていました。
来年に期待したいところです。
評価
玉虫沼は釣り人向けです。観光スポットではないので、一般の人は再訪はしないと思います。
